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特定外来生物選定にあたっての問題点

・参考 平成14年度 信濃川下流水辺の国勢調

財団法人 日本釣振興会
外来魚対策検討委員会
事務局

1.生息状況や被害実態が殆ど解明されていないにもかかわらず、又、虚偽情報が多い中で、なぜ環境省はそんなに結論を急ごうとしているのか。

まず最初に、今回の法律の施行やその特定外来生物選定にあたっては、じっくりと時間をかけて調査を行い、正確且つ客観的な事実が判明してから行われるべきではないのか。いわゆる学者先生だけではなく、現場の実態を充分に把握している人やもっと幅広い知識と見識を持っている人達が集まって、ある程度の時間(少なくとも3〜5年)をかけて進めるべきではないのか。生態系や自然は、人間が考えている以上に奥が深く、安易に結論を急ぐべきではない。現在の環境省の外来種問題に対する姿勢は、明らかに早急すぎるのではと思われる。

1.今回の法律で、海外からの移入に対して一定の制限を設けることは、特定外来生物という客観的且つ科学的データが実証されるのであれば、その費用対効果の面から考えても、ある程度の理解は出来る。しかし、現在国内に生息している外来生物、特に魚類を排除していくことはそれほど簡単なことではないし、現段階では正当な判断はきわめて難しい。

その理由は

(1)国内の魚類生息実態が不明なこと。これまで公的機関による全国一斉の生息調査がなされたことが無く、環境省にも水産庁にもそのような正確な資料が全くないこと。これまで提出されてきた全内漁連等のオオクチバス他の生息分布は、コクチバスの例でも分かる通り、調査の方法(アンケート他)からみても、全く信憑性が無い。また、その間違った生息分布を検証・確認することもなしに、4〜5年間使い続けてきた魚類学者や関係省庁にも責任は重い。まして、そのような資料を元に新たな法律が作られ、その事で国民が負担や大きな規制をかけられることに大変憤りを感じる。まずは、3〜5年かけて全国の魚類生息調査を実施することが先決。

(2)今回の法律の策定及び特定外来生物の選定にあたって、環境省やその関係団体からだされた資料を見てみると、選定にあたって多くの国民や有識者の意見を幅広く聞くというより、あらかじめ「オオクチバス・ブルーギル=害魚」という一方の方向性を決めつけようとしている。また、それを正当化するためだけの資料だけを記載し、それに反する都合の悪い資料は一切載せられていない。また、かなり改ざんしたり、間違った資料も多い。

これまでもそのようなひどい事例を数多く見てきた。滋賀県の場合も、リリース禁止を正当化するため、多くこのようなことが行われてきたが、昨年の皇居かい掘り作業に従事していた環境省及びその委託事業先(財団法人自然環境研究センター)がその時にとった行動も決して許されるものではない。

 

昨年実施された皇居(牛が淵)かい掘り事業は、それまでの数年間の投網調査等で「ブラックバス等外来種は全体の70〜80%を占め、このままでは在来種が危機的な状況になる。少しでも早く手を打たなければ」ということで、大きなコストとエネルギーをかけ、且つ在来種にできるだけ負荷をかけないということで、報道機関にも海外を含め数多く案内が出され実施された。調査初日、皇居前は30社以上のマスコミで大変な賑わいであった。しかし、水抜きを始めて約2週間で、ほぼ全域で水が抜かれたが、その間に予想されていたブラックバス・ブルーギルはほとんど捕獲されず、水抜きを始めて4日目には30社近くいた報道機関からも「どうしたんだ、最初の説明と違うじゃないか」と言われ、ニュースにならないと思ったのかほとんど現場に姿を見せなくなった。環境省からは、捕獲した魚種別漁獲量は、在来種・外来種に限らず毎日報告すると発表されていたが、これもどういう理由か途中から発表されなくなった。

また、最終日には集計結果をマスコミ他に発表するとのことであったが、これも公式には出されなかった。当会から強い要請をしてなんとか取り寄せた。その結果、かい掘り開始前にあれほどマスコミに呼びかけ、外来種=害魚との前宣伝をしていたのにもかかわらず、最終的に「オオクチバスが全体の0.59%、ブルーギルを含めても12%、モツゴなど在来種が87%以上」という集計が分かったためか、全くの沈黙に入った。

その後、しばらくして釣り人や関係者からの強い要請によって、その集計結果(別紙)を出さざるを得なくなった。

 

しかし、最もひどいと思われることは、

@かい掘り調査の段階で関係者の配慮が足りず、結果的に多くの在来種を放置し殺してしまったこと。

A調査前半にまだマスコミが数社取材をしている際に、前宣伝と実態が大きく異なる為か、外来種の割合を少しでも多くするため、魚の取れた網の中から在来種だけを選んで池に何度も戻そうとしたり、在来種を足で蹴飛ばして池にいれようとする行為は、とても在来種保護の為の事業とは思えない。又、公正な調査とはいえない。

Bかい掘り調査に対しては、上記のような生息実態がありながら、今回(財)自然環境研究センターから出された「ブラックバス、ブルーギルが在来生物群集及び生態系に与える影響と対策調査」ではモツゴやヌマチチブ、手長えびなどの在来種が圧倒的に多かったことなどが全く触れられていない。

そればかりか、何とかかい掘り調査を正当化しようといろいろとってつけたような弁明をしている。事前に外来種が少ないことが判明しているのであれば、かい掘り調査を行う前に発表するべきであろうし、大きなコストとエネルギーをかけた上、在来種に大きなダメージを与えてまで実施されなければならなかった事業なのか。又、このようなことを全く記述していない偏った今回の資料なども、オオクチバスを悪者にする為の意図的かつ典型的な事例だろう。

今まで、道義的な事から具体的には触れていなかったが、このような資料がだされるのであれば、実態(ビデオテープ等)を公表することも考えていかなければならない。

この報告書のほかの部分も、憶測による推論や通常の自然界でほとんどありえない限定的な場所での調査が多いが、どうして事実や科学的なデータを調査し、公表しようとしないのであろうか。

 

上記のような事例は、官僚が法案を通そうとする際によく使われる手法であるといわれるが、そのようなことで公正且つ継続して遵守すべきルールが作られるのだろうか。環境省の中の大半の人達が真摯に業務に当たっている中で、一部の人達あるいは関係先によってこのような行為がなされることは残念でならない。又、人間と生物そして自然環境の関係は、自然保護団体熊森協会から、今回の法律案に対して見解が出されているので参考にしてほしい。

当会の基本的な考え方に極めて近い。

 

※注 上記の図又は資料はリンクしておりません。御了承下さい。

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